佐藤さんご夫婦は、夫がサラリーマンで妻は専業主婦の片働き夫婦で「世帯年収600万円」です。
妻は保育士の資格を持ちながらもふたりの育児と仕事の両立が難しく、育休後に職場復帰したものの3ヶ月で退職し、現在は専業主婦として育児に専念中です。
いわゆる「潜在保育士」です。
最近では、4月からは下の子供も保育園から小学生にあがったこともあり、将来のお金(子供の教育費)の不安が出てきました。
佐藤さんご夫婦はもっと収入(世帯年収)を増やして貯蓄を増やさないとまずいのでは?という危機感を持ち始めたのです。
さて、佐藤さんご夫婦は、どのようにして世帯年収をアップするとよいのでしょうか?
夫はサラリーマン&妻は保育士でパート勤務である我が家の経験を元に、アドバイスさせて頂きます。
世帯年収が同じなら片働きより共働きの方が年間47万円もお得
仮に、世帯年収を600万円から700万円にすることを目標とした場合、次のような2つのケースが考えられると思います。
Case1: 夫が仕事をさらに頑張る・転職するなどで夫の年収をさらに100万円アップ
Case2: 妻がパートとして保育園に職場復帰して、世帯年収を100万円アップ
さて、この場合、どちらの方がお得(手取り額が多くなる)かご存知ですか???
どちらの場合も同じ世帯年収700万になるのですが、不思議なことに手取り額は同じにならないのです。
それでは、妻が専業主婦のまま、夫が頑張って年収を100万円上げた場合(Case1)と、専業主婦の妻がパートとして職場復帰し年間100万円を稼いだ場合(Case2)で、どの位手取り額に差が出るのかを比較してみましょう。
[世帯年収を年間100万円アップする場合の夫婦の働き方による手取り額比較]Case | 控除額 | 手取り額 |
---|---|---|
Case1 夫が頑張って働く (片働き) |
¥480,000 | ¥520,000 |
Case2 パートとして職場復帰 (共働き) |
¥10,000 | ¥990,000 |
まずCase1では、夫が頑張って働いて年収(世帯年収)を600万円から700万円と100万円UPしたとしても、約52万円程度しか手取り額が増えていません。
一方Case2では、専業主婦(潜在保育士)であった妻がパートとして職場復帰し、新たに100万円を稼いだ場合は、住民税や雇用保険を払うのみで、なんと約99万円も手元に残ります。
もうお分かりですね。
その差は約47万円/年です。
夫がさらに頑張るよりも妻が保育園に職場復帰し、共働きとなった方が手取り額にして約47万円/年もお得(使えるお金が増える)なのです。
サラリーマンの場合、どんなに頑張っても短期間で年収を100万円アップすることはそう簡単ではありませんから、佐藤さん夫婦の場合、貯蓄を増やすためにはどうしたらよいかが明確ですね。
日本は共働き夫婦(共働き世帯)にすごく有利な税制度
なぜ同じ世帯年収にも関わらず片働き夫婦と共働き夫婦でそのような手取り額の差がうまれるのでしょうか?
それは・・・
日本は、共働き夫婦(共働き世帯)にものすごく有利な税制度となっているからなのです。
(補足)共働き夫婦が知っておくべき「給与所得控除」「累進課税制度」
このからくりをちゃんと説明するとなると、「給与所得控除」「累進課税制度」について詳しい説明する必要があります。
下記の表の通り、給与が上がるにつれて、必要経費と認められる比率が下がってくるのです。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40% |
1,800,000円〜3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円〜6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円〜10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円〜12,000,000円以下 | 収入金額×5%+1,700,000円 |
12,000,000円〜 | 2,300,000円(上限) |
※650,000円に満たない場合には650,000円
[累進課税制度(平成27年分以降)] 所得税は所得金額(給与-必要経費)が大きい人ほど税率が高くなります。下記の通り、所得金額が増えるほど、多くの税金を払うことになります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円〜4.000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円〜 | 45% | 4,796,000円 |
※課税所得とは、給与から各種控除を引いたもの
ですが、ここでは、
- 年収が高ければ高いひとほど、給料に占める税金の割合が高くなるため、片働きで年収を上げれば上げるほど多くの税金(所得税)を支払うことになる
- 反対に、年収が低いひとほど、給料に占める税金の割合は低く、共働きでも夫婦の収入を合算する必要はないため、それぞれの税金(所得税)を抑えることができる
程度の理解で構いません。
パートで働く女性が知っておくべき103万の壁/130万の壁で説明したように、特に103万までは所得税が発生しないのでより多くの手取り額となります。
ただし、「共働きの方が税制面でお得ですよ〜」とは誰もアピールはしていません。
知っている人だけが得をするというものなのです。
まずはパートとして不安を軽減しながら職場復帰がベター
佐藤さんの妻のように、保育士の資格を持ちながらも現在その職についていない「潜在保育士」が年々増えています。
その数、50万人とも言われています。
(同様に「潜在看護師」も多く、その数70万人とも言われています。)
仕事が大変、人間関係、結婚・出産・育児、親の介護、賃金の低さなどその理由は様々ですが、一度職場を離れ、ブランクをつくってしまうと、職場復帰にはそれなりの勇気が必要になります。
ただし、いきなり正社員で復帰することに比べれば、パート職での復帰は不安を軽減することができるはずです。
上記の通り、ブランクがある方は、パートとして職場復帰するだけでも、お金の面で共働き夫婦にはメリットがありますので、夫には仕事よりも育児・家事に協力してもらい保育士のパート職として職場復帰することからはじめてみてください。