「時短勤務」か「パート(非常勤)」か。
多くの働く女性が、育児や介護などを理由に、正社員として働き続けることができない場合に、「離職」という選択肢の他に、時短勤務で働くか、雇用形態をパート(非常勤)に変更して働くかで悩みます。
しかし、「時短勤務」と「パート」の違いをしっかりと理解しているひとはあまり多くはありません。
今回、資格をお持ちの皆様には、「育児と仕事」「育児と介護」を両立して働き続けて欲しいこともあり、この機会に「時短勤務」と「パート」の違いを知って頂きたいと思います。
その違いを知ることで、ご自身に合った働き方を決める際に必ず役立ちますし、会社や上司に相談する際にも知らなかったことでご自身が損することを防げます。
夫はサラリーマン&妻は保育士でパート勤務である我が家の経験を元に、「時短勤務」と「パート」の違いをわかりやすく説明していきます。
時短勤務(短時間勤務)とは?
「時短勤務」とは、勤務時間を短縮して働くことができる制度のことで、育児休業法に定められた制度です。
育児休業法とは別に独自の制度を設けている会社もあるようですが、基本的には、時短勤務は育児休業法で約束された労働者の権利であるということを覚えておいて下さい。
たとえば、子供が幼いため長時間保育園等に預けられなかったり、出産前と同様にフルタイム勤務が難しかったりという理由で、定時までや残業をして働くことが困難なときに「時短勤務」が利用されています。
[時短勤務(例)] 通常勤務 :9:00−18:00(8時間勤務)時短勤務 :9:00-16:00(6時間勤務)
※1時間のお昼休憩含む場合
育児休業法での時短勤務ルール
育児休業法では、時短勤務について下記のように定められています。
対象者 | 満3歳になる前の子供を育てている労働者(男女) |
---|---|
手続き方法 | 労働者から会社に勤務時間の短縮を申し出る |
会社側が しなくてはならない対応 |
その労働者が勤務しながら子育てできることを容易にするための措置を講じなくてはならない |
その他 会社側の義務 |
時短制度を導入しなくてはならない。
|
ただし、下記の条件に該当する人は、会社によっては時短勤務に変更できない場合があります。
転職後すぐに妊娠・出産となると制度を利用できない可能性があるので、転職のタイミングには注意しましょう。
- 入社してから1年を経過していない労働者
- 1年以上雇用しているが、勤務時間の短縮をしないことに合理的な理由がある場合
- 業務の性質や業務の実施体制において、時間短縮が困難な業務についている場合
もしもこの3点に該当して時短勤務ができない場合にも、会社側は「労働者が仕事をしながら子育てすることが容易になるような措置」を講じなくてはならないことになっています。
その他勤務時間に関する法律の規定
その他にもちいさな子供をかかえる労働者は、勤務時間について下記の請求を行うことができます。
- 残業の制限
満3歳を迎える前の子供を育てる労働者が請求した場合には、会社は時間外労働をさせることはできません。 - 残業時間数の上限設定
小学校就学前までの子供を育てている労働者が請求した場合には、会社側は月24時間、年150時間を超えて残業させることはできません。 - 深夜労働の制限
夜22:00~翌朝5:00までを、労働基準法では「深夜労働」と呼び、小学校就学前の子供を育てている労働者は、この深夜労働を断ることができます。
いずれも、会社と労働者が協定を結ぶことで、例えば、「雇用されてから1年経っていない人を対象外とする」ということをできるようなので、詳しくは、会社に問い合わせてみましょう。
時短勤務中のお給料はどうなるの?
法律では、時短勤務中のお給料については規定がありません。
規定が定められていないため、残念ながらほとんどの会社で、減った勤務時間分だけお給料も減るようです。
看護師の場合は、給料の多くを占めていた残業代がなくなるため、時短勤務後初めてのお給料日でその減り具合に愕然としてしまうそうです。
また、お給料の総額が変わると、所得税や社会保険料など天引きされるものも変わってくるので、実際の手取り額をみてから支出を考えるようにしましょう。
時短勤務前の金銭感覚では家計は大赤字になりますのでご注意下さい。
時短勤務中は正社員扱い?
時短勤務中も雇用は「正社員」のままです。
正社員のため福利厚生制度を利用できるなどのメリットがありますが、福利厚生があまり充実していない職場では、正社員のメリットを活かせないためパートにするかどうか悩むところでもあります。
賞与(ボーナス)、有給休暇、住宅手当など各種手当が、正社員とパートで違いがあるかは予め確かめておきましょう。
もし正社員としての勤務を望むなら、結婚・出産後も辞めずに時短勤務制度を活用することをおすすめします。
時短勤務経験者の悩み
時短勤務を活用することによって、働きながらも子供と過ごせる時間を確保できる一方で、、、
- まだ仕事は残っているのに、ほかの社員よりも先に帰る申し訳なさ
- 責任のある仕事は任せてもらえないジレンマ
- 産休/産前のバリバリ働いていた頃の自分と現在のギャップ
- 産休/産前と同じ成果を上げていても給料は下がる虚しさ
- キャリアアップ/スキルアップに対する焦り
- 業務量はほかの人と変わらないのに、残業ができないがゆえの忙しさ
- 飲み会に誘われなくなるなど職場仲間からの疎外感を感じる
など、時短勤務ゆえに頭を悩ませてしまう問題も多く存在しているのも事実です。
パート/パートタイムとは?
「パート(パートタイム労働者)」とは、時間・日時を自由に選んで働くことができる雇用形態のことで、基本的には、正社員よりも働く日数、時間が短い働き方をします。
パートタイム労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)の対象である「短時間労働者(パートタイム労働者)」は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」
例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となるようです。
※厚生労働省ホームページより引用
多くの場合、時間制限がある人が働くには適している雇用形態ですが、昇進やスキルアップを目的とする雇用形態ではありません。
パートの有給休暇と社会保険
パートは、所定の労働時間より短いというだけで、労働者には変わりないため、有給休暇の取得や社会保険の加入も可能です。
パートの社会保険の加入条件は、以下の通り労働基準法で定められています。
- 正社員の3/4以上の勤務時間を有する者
- 1か月の勤務日数が正社員の3/4以上である者
これらに該当する場合、パート(アルバイト)であっても社会保険への加入が義務化されていますので、もし現在の職場がパートということを理由に社会保険の加入手続きをしてもらえないようであれば、必ず相談するようにして下さい。
社会保険に加入する場合は、毎月の給与から社会保険料が天引きされるので手取り額は減りますが、共働きの場合は、年収130万までに抑える(夫の扶養から外れない)ことで、社会保険料の負担を避けることができます。
※詳しくは、パートで働く女性が知っておくべき103万の壁/130万の壁をご覧下さい。
正社員(時短勤務)との違いは?
パートと時短勤務との一番の違いは、時短勤務は結局のところ正社員なので会社の制度に守られていますが、パートはそうではないということです。
例えば、
- 社会保険の加入
- ボーナス
- 退職金
- 昇給や昇進
- 有給休暇
- 特別休暇(夏季・育児・介護など)
- 研修制度
などは、どの法人もパートよりも正社員(時短勤務)の方が報われる設計になっています。
そして、普段はあまり意識していないかもしれませんが、パートは経営者の独断で解雇(クビ)にされてしまうこともあります。
正社員はそのような事はもちろんありません。
パートの悩み
パートで働く場合も時短勤務に類似した悩みがあるものの、周囲から受けるプレッシャーは時短勤務と比べると極端に軽くなります。
- 責任のある仕事は任せてもらえないジレンマ
- 雑用ばかりをやらされる悔しさ
- 稼ぎたくてもシフトを削られてしまう場合もある虚しさ
- 時給制で働いた時間分だけがお給料になる素っ気なさ
- 産休/産前のバリバリ働いていた頃の自分と現在のギャップ
- キャリアアップ/スキルアップに対する焦り
など、正社員で働いていた頃の自分との比較してしまう上での悩みが目立ちます。
時短勤務とパートの比較&まとめ
結局のところ、「時短勤務」と「パート」ってどっちがいいの?となりますが、次の表にまとめてみました。
時短勤務 | パート | |
---|---|---|
雇用形態 | 正社員 | パート |
契約期間 | 無期 | 有期 |
給与 | 基本給 手当 残業代 |
時給制 |
昇進 | あり | (基本的には) なし |
責任 | 重い | 軽い |
上記のような差はあるものの、実質は、パートだと子育て中ということを考慮され、時短勤務よりかは職場から早く帰りやすいなど、精神的な差の方が大きいと思います。
特に、時短勤務に対する対応がまだ遅れている職場だと、時短勤務制度を利用しているママへの態度は冷ややかなようです。
看護師や保育士など資格職の場合は、一旦時短勤務やパートになったとしても、フルタイムに戻ることは比較的容易なので、育児や介護の状況をみながら働き方を変えていくとよいと思います。
我が家も職場復帰して2年間はフルタイム勤務でしたが、二人目の出産を機にパートに働き方を変えています。
パートになった直後は、担任を持てない悔しさや給料が大幅に減ったことにショックを受けていましたが、今はそれを受け入れて、育児と仕事の両立を楽しんでいます。
そして、子供達が大きくなったときにはフルタイムに戻る予定だそうです。